大阪万博パビリオン体験記第4弾はシグネチャーパビリオンの「EARTH MART」。
万博では各団体がいろいろな切り口から「未来」や「命」にアプローチしていますが、EARTH MARTでは「食」を通じて思いを巡らすパビリオンとなっています。
大きく2つのエリアから構成され、前半は普段いただく食べ物が他の動植物のいのちであることを再認識する「いのちの売り場」、後半は最先端のフードテックなど未来の食事情に心躍る「みらいの売り場」が設けられています。
いろいろな展示があり盛りだくさんだったので、比較的ゆっくりまわって体験時間は1時間30分でした。
これから行く人へ、または訪れた人の振り返りになれば嬉しいです!
まず、「命と食の循環」をテーマにした映像を鑑賞
最初に案内される部屋では作務衣姿の男性が白米を食べる映像が流れるのですが、その男性が嵐の松本潤さん。
しっかりと「いただきます」から始まり、美味しそうに食べて、「ごちそうさま」で終わる。
当たり前に何気なく行っているの食の儀式ですが、今一度「いただきます」の意味を次の部屋から考えていきます。

いのちの売り場

この部屋では普段いただく食べ物が他の動植物のいのちであることを再認識するためのいろいろな展示があります。
視覚的にもわかりやすい工夫が凝らされていて、大人にも子供にも気づきがある内容だなと思いました。
いちばん食べられる魚
地球で最も食べられている魚は「鰯(いわし)」とのこと。

つまり地球で一番多くの命を支えている魚でもあるということ。
一匹のマイワシは一生の間に約10万粒の卵を産むそうですが、他の動物に食べられたり、養殖のエサとして利用されたりすることで、食卓に届くのはたったの3匹になるそうです。


この展示は実際に10万匹のサンマを展示しているそうです。
一生で食べるタマゴの数
日本人1人が一生に食べる卵の数は約28,300個。これはアメリカよりも多く、約29,400個の中国に次いで2位だそうです。
下の画像に見えるのはこの約28,300個の卵を全て使って目玉焼きを作ったときの大きさ。





大量にいただいているんだなと実感しますね…



タマゴのオブジェクトには座ることもでき、大きさを感じることができます!
いのちのショーケース
世界の人々がいただく主な食べ物と年間消費量(いのちの数/年)を表しています。


他の雑食性動物と比べても人間が食べる食材の数は圧倒的に多く、数万種もあると言われており、多くの種類と数の「いのち」に支えられていることがわかります。





食品トレーにのった形で様々な「いのち」が画面に流れてくるんですが、ときどき活きの良い魚が飛び出たり、エビがキャベツのトレーに食べに出てきたり…ちょっとかわいかったです。
いのちのはかり
このはかりでは単に重さをはかるのではなく、その食材の背景にあるいのちの重さを実感できます。


例えばこれはチョコレートを乗せたときに浮かび上がる「1%」


なんとカカオの実ができる確率とのこと!そしてそんな器量な1個の実からとれるカカオ豆は板チョコ一枚分にしかならないんだって…



貴重品すぎない!?カカオの花はとても小さいから一部の昆虫じゃないと受粉もできないそう!
他には下記のような食材がありました。
- 牛乳「7倍」⇒牛の赤ちゃんと比べた人間が飲む牛乳の量
- コーヒー豆「140L」⇒1杯のコーヒーのために使われる水の量
- おにぎり「500粒」⇒一粒の種もみから稲が成長して実る米の量
- はちみつ「5g」⇒ミツバチが一生かけて集めるはちみつの量
- ミネラルウォーター「12カ国」⇒水道水をそのまま安全に飲める国の数



他の動物の働きや生命力の恩恵を受けまくっているし、蛇口ひねったら水が出てくる環境に感謝して大切にしないと…
みらいの売り場
次のエリアでは、食材や調理に関するいろいろな新しいテクノロジーが紹介され、未来の食事情を体験できるようになっています。
また一方でそういったフードテックだけでなく、日本古来の食材における古くから伝わる知恵や技術の展示もあり、より良い食の未来へ気づきを得るような内容になっています。
大阪ヘルスケアのパビリオンも未来のヘルスケア・都市の展示がありましたが、こちらではより食に特化した内容が紹介され見ごたえがありました。


未来を見つめる鮨屋
ここではモニター越しで普段天然魚しか扱わない寿司職人が、養殖魚を握ってタブレット上に提供する展示がされています。


急激な気候変動といった漁獲環境の変化にも対応できるように、未来では養殖技術や魚の品種改良が発達しているとのこと。
可食部を増やして「食品ロスを減らすマダイ」や、現状ほぼ輸入品で賄っている「完全国産養殖シロアシエビ」など、寿司文化を美味しく持続させようとするヒントでいっぱいの展示です。


実際に品種改良された魚の水槽もあります。(これはおそらく気候変動に強いヒラメ)
進化する冷凍食
これからの冷凍技術は単に食材を冷凍して保存期間を延ばすだけというものではなく、新しいおいしさや価値を生みだしていくテクノロジーになっていくとのこと。
- 「ウニの殻」:葉酸やカルシウムが豊富
- 「樹皮」:香りや抗菌作用も生かせる
- 「未利用魚」フードロス削減に貢献
- 「ロスフラワー」:色素や香料として利用
- 「ワインの搾りかす」:ポリフェノールなど多くの栄養素を持つ
- 「米」:凍結粉砕することででんぷんの損傷を抑えなめらかな仕上がりに
- 「殻ごとの卵」:殻に含まれるカルシウムもまるごと
- 「マッシュルーム」通常は廃棄する軸なども含めて調味料に
- 「カカオ」:気候変動で収穫が困難になりつつあるので保存性を高める
- 「ビーツ」:栄養価も高く、色鮮やかな色素
- 「皮ごとバナナ」:皮も含めて廃棄ロスを減らす
- 「鶏肉」:世界で最も生産・消費されるたんぱく質の保存性と汎用性を高める
- 「ほうれん草」:傷みが早い葉物野菜をより手軽にストックできる
- 「じゃがいも」:品質栄養を保持したまま輸送や食品加工の効率アップ
- 「あおのり」:海藻食の発展につながる
- 「醤油の搾りかす」:香りや風味を強く感じられ調味料としての新たな用途
- 「酢」:酸味・風味が凝縮
- 「ごま」:香りと栄養を保持したまま風味豊かな食品素材に
- 「ショートニング」:パウダーにして固形でも液体でもないあたらな用途に
- 「納豆」:納豆の粘り気や風味を保持しながら保管と輸送を容易に
- 「高菜」:味・風味をそのまま保管して伝統的な作物や料理を未来へつなぐ
- 「ブロッコリー」:廃棄部位を減らして栄養価を活かしたアップサイクルへ
- 「人参」:偏食の人の栄養課題の解決へ
- 「小豆」:あんこへの加工の過程で廃棄される部位も食材化



パウダー化することで新たな付加価値がつく食材があったり、まるごと加工することでフードロスを減らせるんだね!


パウダー状の食材を水やでんぷんで液化し、「フードインク」という3Dフードプリンターで食品として印刷します。


食べ物の粒子をとばすことで無重力状態でも印刷できるため、宇宙への食事にも応用できるかもとのこと!



すごく未来的な話だ…3Dプリンタって食の分野にも活用されるんだね!
実際に冷凍パウダーから作られた未来の食べ物の例です。


また、パウダー化した食材と破砕米の米粉を成形し、再びお米にした再生米も紹介されています。





美味しい・栄養価の高い再生米で昨今問題になっているコメ不足も解決できるかも!





高菜チャーハン米やパエリア米など、炊くだけで調理ができるお米なんて時短にも役立ちそう!
味を記憶し、再現できるキッチン
レシピ通り作ったのになんか味がいまひとつ決まらない…ということありませんか?(私はよくある)
未来で提案されているのは録音ならぬ「録食」。調理データ化技術です。
オリジナルの味と全く同じになるよう、温度や食材の投入タイミング、混ぜ加減、水分量など調理の完全再現に必要となる情報をカメラやセンサーで高精度に記録し分析。


IHと連携した専用のアプリで、グラフや音声ガイドのナビゲーション通りに調理することでレシピを忠実に再現できるようになるそうです。



時空を超えていろいろな人のレシピを共有できるようになるね!
日本が誇る料理研究家、もこみちのレシピも見れるよ!


IHでの水分蒸発をモニター?しているグラフ。確かにこういうガイドがあれば水っぽくならなくなるのかな?


EARTH FOODS 25
食の未来をより良くするために、世界に共有したい日本の食の知恵として、伝統的でありながらサステナブルな25品目が紹介されています。


米粉、餅、豆乳、高野豆腐、あんこ、大根、わさび、山椒、かんぴょう、こんにゃく、抹茶、香酸かんきつ、梅干し、椎茸(干し椎茸)、昆布、わかめ、のり、寒天、ふぐ、すり身、鰹節、麹(種麹)、日本酒・みりん、しょうゆ・みそ、野菜の漬物
これらの食品の説明と新たな価値を生み出す包装アイデアが壁に展示されています。





すごく見ごたえのあるエリアで、和食の栄養的な価値や保存技術はもっと評価されて世界に広めていくべきだなと思った!



普段何気なく食べている和食材の意義を見直す機会にもなったね!


食べることで「食の未来」に想いを馳せるお菓子、ということでEARTH FOODS 25の一つである米粉から作ったキャラメルが出口でもらえます!
UMEBOSHI ~BANPAKU-ZUKE〜 2025→2050


今回の万博で「万博漬け」として梅干しを漬けるそうで、来場者には2050年の引換券が全員もらえます。


梅干しは和歌山県で収穫された梅と熊本県の塩が使われているそう。



2050年、私たちはどうなっているのかな??
また、梅の花は花弁が5枚あることから五福を招く花ということで、皆の願いを絵馬に書くコーナーもあります。


円卓を囲み、改めて食について振り返ろう


最後の部屋では巨大な円卓があり、そこに映し出される映像を鑑賞します。


「食べるって、なんだろう?」という問いから始まり、食卓を一緒に囲むことで心がつながり、おいしいという幸せが命をつむぐ、というメッセージが食材や団欒の食事の様子を通して伝えられます。
そして最後に「食べるとは…地球という食卓を囲んでいっしょに生きること」


「いのちの感謝をこめて…いただきます!」



ここまでの展示を体験すると、すごくこのメッセージが腑に落ちます…!
まとめ:食についてあらゆる角度から見つめなおす機会に
毎日毎日必ず切っても切りはなせない「食」について、真正面からも側面からも焦点を当てた真摯なパビリオンだったなと思います。
展示もわかりやすくメッセージもはっきりしているので、老若男女問わずおすすめできるパビリオン間違いなしです!
いつも何気なく言っていた「いただきます」ですが、「いただきます」の裏にあるいのちや作り手の想いなど、あらゆるものに感謝して、美味しさをかみしめていきたいなと思います!